今回の市民活動研究会テーマは「市民・企業・行政の協働Ⅰ〜災害時の協働〜」でした。
宮城県利府町内外の市民活動の活動者や様々な属性のみなさんが集まって市民社会に対する交流や研鑽を行い「市民のチカラ」を温めるのが市民活動研究会です。3月19日(火)の対面回は利府町文化交流センター(リフノス)にて実施しました。
今回のテーマ「市民・企業・行政の協働Ⅰ〜災害時の協働〜」
今年は正月早々、能登地方で痛ましい災害が起きました。そして毎年3月がくると東北・宮城のわたしたちも13年前に起きたことをどうしても思い出してしまいます。
そのような教訓と痛みに寄り添い、これからの市民協働の利府町を考えるために、今回は災害時に「市民(町民や活動団体)」「企業」「行政」が、それぞれの特異性や長所をどのように活かして協働するかを話し合ってみました。
先ずは災害のシミュレーションから
「災害が起きた時、どう協働する?どう助け合う?」という話し合いを具体化するために、防災士の五十嵐千晶さんから大規模災害をシミュレーション頂きました。
「災害ってシミュレーションするのも怖くて…」という五十嵐さんは新たな大規模災害を想定せずに実際に起きた「3.11東日本大震災」を事例として提示いただき、利府町内での当時の被害・被災状況を細やかに説明くださいました。五十嵐さん自身も、3.11発災時は仙台市内で勤務中で、職場の混乱に必死に対応したという体験談を話されました。
どうやって協働する?
研究会からは、提示された被災状況に関して①どんな困り事が起きそうか②誰がどうやって(うまく協働して)解決できそうかという2題を提示し、フリーディスカッションしました。
最初はそれぞれが3.11の被災者だったため「あの時は〜〜してたんだよねー」という振り返りから入ります。それから、困り事、解決策を思いつく限り挙げて頂きましたが、今回も主催者からは想定できない様々な意見が呈されました。
- 食料や排泄や下着等衣料品の確保その他日常生活に必要なインフラ。災害時はこれがなかなか揃わなくて、「これが日本なのか」と悲しくもなってしまう。
- 避難所での共生。ペットや障がいのある方、高齢者、LGDBQの方、こどもをたくさん抱える方の支援
- いわゆるマイノリティーと呼ばれる方の個別支援は「市民」が率先して行える。
- 有志として地区内にボランティアセンターを立ち上げて、有志を募り活動した。
- 全国規模の企業職員として、あちこちから食料を調達して宮城へ帰ってきた。
- 企業の強みを活かせた。
- キッチンカー事業者が「炊き出し活動」として重宝がられている。
- 公教育が停止している間のこどもたちの学習の遅れや友達との交流
- (利府町)寺子屋みたいな学習支援が求められる。そこに企業や行政の支援が乗れば課題はスピーディーに解決に向かう。
- 情報網の欠如。被害状況や要支援者や、順番にできる支援活動がわからない。
- 行政が早く正確に情報を支援可能な多様な主体に降ろせるか…。
- 協働して行うべき支援と率先して行うべき支援と、支援内容によって特性や協働の足並みが揃えられる難易度に相違があるように思える。それを判断できるコーディネータやディレクター、ハブ機能が必要なのでは。
ほか多数の意見でディスカッションが繰り広げられました。
表題の「市民・企業・行政の協働」として役割の定義までは時間が足りませんでしたが、概ね次のようにまとめられます。
【市民(町民・市民活動団体)】
率先性…率先して個別的または目の前の困りごとに(ニーズが少なくても)対処できる。いわゆるマイノリティーと呼ばれる方の困りごとも対応できる。行政や市町村社会福祉協議会に先んじてボランティアセンターを開設することも可。
【企業】
資源性…企業の規模が大きければ大きいほど全国の多数の拠点やネットワークから物的資源が確保でき対処できる。また個人事業や中小企業でもキッチンカー等の例にならい出来ることがある。
【行政】
情報性と正当性…災害時の被害状況、被災状況、支援が必要なひと・もの・こと等正しい情報を確保し俯瞰的な視点で着手すべき支援を判断できる。
【まとめ】
緊急時対応は普段どのように災害に備えているかに左右されるため、「災害時の協働」も「平時の協働」が土台となりうる。
(平時の協働が機能していない地域は、災害時に協働が機能すると言い難い。)
2023年7月に行われた研究会「市民×行政コミュニケーションのひけつ」では、まとめの1つとして「困ってからではなく定期的・意図的なコミュニケーションが大事!」という事柄が導き出されましたが、まさに今回も同様の結論が言えると考えられます。
もちろん別の回では「平時の協働」について語る時間も設けたいと思います!
利府町市民活動研究会とは?
リフ超学校では2021年より利府町市民活動研究会の発足・事務局団体を担っています。利府町でも目覚ましいことに、近年は10〜30代等若い世代で組織される市民活動団体が徐々に増えてきています。台頭してきた活動者たちが個々に動き、運営難から活動を諦めせざるを得ない状況(地域活性化や市民協働社会の停滞にもつながる)を予防するため、団体同士がネットワーク化することを決め、また他セクター(行政・企業など)と対等に話し合えるテーブル(真の協働社会)を目指すためこの利府町市民活動研究会を立ち上げました。この利府町市民活動研究会では1〜2ヶ月毎の対面ワークと常態するオンラインコミュニティの二層構造でうごいています。月ごとの対面ワークでは各団体に共通する課題に対し、合同研修やケース会議を行い、常態化したオンラインコミュニティは市民活動に役立つ情報の発信、各団体が持つ資源共有の連絡相談、団体/個人間の親睦に役立てられています。
また2023年度からはこの地域に触れるあらゆる主体に通ずる「市民活動促進」と「市民協働」というものの一定の共通認識をつくる運動も始めています。